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INTERVIEW

彼女たちの紡ぐ未来

インタビューアー / (株)IN THIS TOWN 加藤綾

韓 雪華さん(写真左)/ 本石 満月さん(写真右)

南畑在住の高校三年生。地域活動にも積極的に参加していて、地域の方々から「満月(みつき)ちゃん」「雪華(ゆうか)ちゃん」と呼ばれている南畑の看板娘です。

「みつきちゃーん!ゆうかちゃーん!」

南畑の様々なイベントで、地域の方々が彼女たちの名前を呼ぶ声をよく耳にします。この3月まで高校生の満月(みつき)ちゃんと雪華(ゆうか)ちゃん、大人たちに混ざって元気に働く二人のまわりには、自然と人が集まり笑いが絶えません。他の地域では少し珍しい光景かもしれませんが、南畑ではこれが日常。「南畑が大好き」という彼女たち。その気持ちはどこから生まれたのか。じっくり話を聞いてみると、二人の地域への思いや夢にあふれたリアルな声に触れることができました。

―いつも仲の良い満月ちゃんと雪華ちゃん。二人の出会いのきっかけは?

満月さん:小学校・中学校は同じだったけど学校ではあまり話をしたことはなくて。中学3年生の時に通っていた質問塾(※)で自然と話すようになったのがきっかけですかね。実は友達と話す時間が楽しくて質問塾に行っていたような気がします。

雪華さん:そうそう、二年くらい前から地域行事で顔を合わせる機会も増えて、一緒にいることが多くなったよね。初めの頃は地域の方に誘われて参加していた地域行事だけど、今では色んな場所に顔を出して沢山知り合いも増えたんです。年末に行われる南畑ぼうぶら市場の餅つきでは、満月と一緒に餅の返し手をやっていて、最近はそれを見てくれていた地域の人たちが声をかけてくれて、南面里地区の餅つきや、地域の方のお家の餅つきにもお呼ばれしてどんどん参加しちゃってます。

※質問塾:毎週金曜日の夜に南畑地域で開かれている地域塾。”考える力”を身につけることを目標に、分からないところを気軽に質問できる場。南畑小学校の卒業生も先生として参加している。

(地域の餅つきで慣れた様子で返し手をする満月ちゃん)

―本当に沢山の行事やイベントに参加していますよね。

満月さん:私は昔、別の地域に住んでいた時期もあったんですけど、その時はこんな風に地域と関わりを持つなんて考えてもいなかったです。南畑の空気感や人が好きだから地域で活動しているのかもしれないです。

雪華さん:私も同じです。南畑では地域の人たちが家族みたいに接してくれて、いつも気にかけてくれていて。みんな親しみやすくて年が離れていても話しやすい人たちばかり。だから行事にも参加しやすいし、そんなあたたかい人たちがいっぱいの南畑が大好きです。

(インタビュー前にお菓子を買いに行った直売所「かわせみの里」での一枚。後方に映っているのは、二人が”めぐ姉”と呼ぶ寺井さん)

(地域の活性化に取り組む南畑ぼうぶら会議の高取さんと。年齢差は約60歳ですがSNSのやり取りをするほど仲良し!)

―地域で活躍する二人も普段は福岡市内の学校に通う高校三年生。放課後や休みの日はどんな風に過ごしていますか?

雪華さん:二人とも一眼レフカメラが趣味で、南畑の風景が大好きなんです。最近は中ノ島公園や南畑小学校で写真を撮ったり遊んだりしています。あとはお互いの家で過ごしたりもするけど、地域の方が友達のように接してくれておうちにお呼ばれしたりすることも結構ありますね。

加藤:高校生ともなればもっと街や地域外に遊びに行っていそうなイメージもあったけど、南畑で過ごすことが多い?

満月さん:雪華と一緒に福岡市内に遊びに行ったこともあるけど、なんだかあまり楽しめずにすぐに南畑に帰って来ちゃって・・・中ノ島公園で遊びました(笑)。中ノ島公園は誰かしら地域の知り合いに会える場所なので居心地が良くて頻繁に行っています。気候の良い時期は、河川敷に座って話をしたり、屋外の椅子やテーブルでご飯を食べたりするのも好きです。欲を言えばもっとゆっくりできる屋内スペースがあると良いな〜。

雪華さん:そんなスペースがあれば、コタツを置いて、ポットを置いて、お茶菓子を持ち寄って・・・(笑)井戸端会議ができそう!気軽に地域の人たちが集まって話ができる場所がほしいです。

(中ノ島公園で雪華ちゃんが撮影した満月ちゃん)

―そんな場所があるとついつい長居してしまいそうですね。他には南畑にどんな場所があったら嬉しいですか?

雪華さん:私たちはよく写真を撮るので、フォトスポットが欲しいです。

満月さん:使っていない田んぼを向日葵畑やコスモス畑にするとか、南畑の自然を活かしたようなフォトスポットがあると良いです。そんな場所が増えれば、中ノ島公園で川遊びをした後に花畑を見に行ったりと南畑を回遊できますよね。

加藤:それは外から南畑に遊びに来た人たちにも南畑を満喫してもらえる良いアイディア!

雪華さん:そうですよね。南畑を訪ねて来てくれる人たちが楽しめる場所が増えると良いなと思います。でも、今一番ほしいのは、南畑で暮らしている人たちが楽しめる地域の人のための場所かもしれません。

「地域の人のための場所」とはどんな場所ですか?

雪華さん:南畑にはカフェやパン屋さんとか素敵なお店が沢山あるけど、平日や夕方以降の時間帯に開いているお店はあまり多くはないですよね。だから、地域の人が学校帰りや仕事終わりに集まって、一緒に食事したり、話をしたりできる場所があれば良いと思います。定食屋や食堂など、ふらっと立ち寄りやすい雰囲気のお店が良いですね。

満月さん:普段の買い物は、市内の市街地や福岡市に出かけるかネット販売を利用するかなので、南畑で生活に必要なものなど色々な買い物ができる場所がほしいです。ショッピングモールみたいな大きな施設じゃなくて良いので、雪華が言っていた定食屋の他にカフェや雑貨、衣料品とか、小さなお店がいくつか集まっている商店街みたいな場所があれば歩いてまわるのも楽しそうですよね。近くに本屋もないので、自分の好きな本を寄付したり販売したりできる図書館や本屋もほしいです。地域のみんながセレクトした本が並ぶので、面白い品揃えになりそうじゃないですか?

雪華さん:南畑郵便局の周辺にそんな場所がほしいよね。地域の中心部で南畑小学校やJAも近いから便利だと思います。南畑には料理や手仕事が得意な方が多いから、みんなでお店ができるんじゃないかと思います。満月と私でまずは一店舗目を始めようかな!

加藤:南畑には昔、郵便局の向いに百貨店や旅館があり、道の両側には劇場や呉服店、食堂、雑貨屋など色々なお店が並んだ商店街のような場所があって、賑わっていたのを前回のインタビューで教えてもらって。時代がかわっても人々が集まり交流できる場所って必要だよね。二人や地域の人たちが営むお店、なんだか想像しただけでワクワクしてきた!

(お惣菜屋は○○さん、本屋は○○さんと次々に地域の方の名前があがります)

―二人でお店を持つこと以外にも、将来叶えたい夢や目標はありますか?

雪華さん:南畑では猪による農作物等の被害に地域の方々が悩まされているので、狩猟をしたいと思っています。猟をすることはもちろん狩った野生肉の処理・加工・販売にも携わりたいです。野生肉の解体・加工のためには許可を受けた解体処理施設が必要だけど、南畑にはありません。狩猟を行っても自家消費しかできないので、多く獲れた時は廃棄となることもあるそうです。施設や設備にはお金がかかると思うんですが、命を粗末にしない仕組みをつくりたいです。まずは狩猟の免許を取りたいので、地域の猟師さんにお話しを聞いたり知人に狩猟を行っている団体を紹介してもらったりして勉強をしています。

満月さん:私は、進学先で資格を取得して医療関係の仕事に就きたいと思っています。地域外で就職したとしても経験を積んで南畑に戻ってきて、みんなが暮らしやすい地域をつくりたいです。南畑の地域内には病院がないんですが、身近な場所に心身のことを相談できる場所がないって不安だと思うので、医療や福祉の相談窓口をつくりたいです。

雪華さん:私も大学で社会福祉士や養護教諭の免許を取ろうと思っているので、満月と一緒に相談窓口もやりたいな。子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、気軽に相談に来れるような場所をつくろう!

満月さん:私たち、やりたいことが沢山あるね(笑)

雪華さん:それと実は私、いつか南畑美術散歩の実行委員長もやりたいんです。昨年の美術散歩でにじみ絵の体験の手伝いをしたんですが、スタッフの約半分が小学生で楽しそうにお手伝いをしていました。私が実行委員長になったら子ども実行委員会をつくってどんな事をしたいのか子どもたちに企画から関わってもらいたいです。そうしたら、子どもたちやその家族など、地域の人たちがもっと参加してくれるイベントになると思います。地域活動と大学生活との両立で地域の方々に迷惑をかける事があるかもしれないけれど、チャレンジしてみたいと思います!

(南畑美術散歩でにじみ絵のスタッフをする雪華ちゃん)

―最後に、地域への思いを存分に語ってください。

満月さん:就職等で南畑を離れることがあるかもしれないけど、その時は今度は外から南畑を見てみたい気持ちも持っています。でも最終的にどこで暮らしたいのかと考えるとやっぱり南畑なんです。それは、この地域の人たちが私たちのことを受け入れてくれているっていつも感じられるからなんだと思います。本当に感謝しています。

雪華さん:私たちがそうであったように、地域にかかわることで地域のことが好きになっていくと思うので、みんなが参加できることを考えていきたいです。南畑の全地区合同の運動会や餅つきを開催して、そのあとに、子どもも大人も集えるような打ち上げやおこもり(地域行事の後の会食)をしたい。みんなで協力してつく餅つきは楽しいし、みんなでワイワイ話しながら食べるご飯は絶対に美味しいと思う。そういう南畑の良さを子どもたちやまだ地域行事に参加したことがない人たちにも伝えていきたいと思います。

(地域の方々やSUMITSUKEスタッフと談笑する二人)

インタビュー後、地域の方々から「サポートするから次回の美術散歩は実行委員長をしなよ」「二人が居れば南畑の将来は安心だね」「これから二人みたいな存在がもっと増えると良いね」と声をかけられていた満月ちゃんと雪華ちゃん。インタビューを通して、地域とのあたたかな関係性が彼女たちの南畑への思いを育み、その思いが南畑の未来へつながっていくのだと感じました。二人の屈託のない笑顔と前向きな言葉に私もたくさんの元気をもらってしまいました。