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TALALEBA

森に佇むレンガ倉庫に何を想う

AUTHOR

坂田 賢治 / 福岡R不動産

独自の視点で物件を紹介する不動産屋「福岡R不動産」に所属。これまで20以上の自治体と協働で進めてきた移住促進事業の経験を活かして、南畑に眠る空き家の整備を進める。飲み会と本があれば基本的に幸せ。

GUEST

長尾 牧子 / 地域おこし協力隊

2014年8月に那珂川町(現:那珂川市)地域お越し協力隊の南畑担当に就任。持ち前の行動力で、瞬く間に地域の人たちに愛されるキャラに。移住希望者と地元住民の橋渡しを行うキーマン。アート大好き。息子2人、娘1人、夫と5人家族。

はじめまして、福岡R不動産の坂田です。「こうなったら・・・」「あ~なれば・・・」と南畑の未来を空想する「たられば不動産」の第1回目を担当します。連載の最初なので、かなり試行錯誤な感じになると思いますが、独断で「たられば」していきますので、よろしくお願いします。
(※以下、文中「那珂川町」は取材当時、現在は「那珂川市」になります。)

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記念すべき第1回目のお相手は、那珂川町地域おこし協力隊の長尾さん。愛されキャラの長尾さん、とにかく明るく人の懐に入るのがとても上手な方で、僕らと地域の方々、役場の方々にとっての潤滑油のような欠かせない存在です。

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さて、そんな長尾さんと向かったのがすごいヤツなんです。辺りはうっそうと生い茂る森、その中に隠れているなんとも渋いヴィンテージ感満載のレンガ倉庫!

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実は、はじめて長尾さんに南畑を案内してもらったときから、ずーーっと気になっていた建物。遠くから見るといい感じですが、近づいてみるとこれが独特のオーラと廃墟感。そしてデカイっ!

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これは、なかなかの代物です。

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反対側に周ってみると、そこには入口が。もちろん扉はございません。って言うかカッコ良すぎます。

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続いて中に。床にはうっすらと土が積もっており、ところどころには苔も。ある意味、天然の絨毯のようで味があります。この天然の風合いは長い月日がなければ出すことはできません。

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そして、やはり気になるのが、天井というか屋根。・・・なし。

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空と木々が見えていました。でも、壁の上にある苔なのかシダなのかの植物はいい味わいを出しています。よく見ると、窓には鉄格子が入っており、こちらもなかなかの雰囲気。これはもうちょっとトトロの世界観に近いものを感じます。そして、空を見ながら立ち尽くす僕と長尾さんの空想は始まりました。

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坂田「やっぱ、屋根はないですね。」
長尾「築年数もかなりたっていて、使わなくなってからも長いみたいですから・・・。昔はこんなレンガ造りの倉庫が南畑にはたくさんあったみたいですよ。」

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坂田「この壁の中間にある緑の線は、たぶん昔2階の床があったんみたいですね。緑の線がない部分は吹き抜けで、梯子か何かがあったんじゃないですかね。」
長尾「あ〜、なるほど。そしたら、2階を復活させるのもいいかも。」
坂田「でも、なんかずっと見ていると、屋根がなくて空が見えるのが良い気がしてきました。半分屋外みたいな感じで。中庭のように使うのもありですね。」

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長尾「確かになんか落ち着くというか、ちょっと神秘的というか、独特の雰囲気がありますよね。この雰囲気は残したい。」

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長尾「特に手を加えなくても、音楽の演奏会やダンスの公演などはしたら面白いかも。この独特の雰囲気でパフォーマンスしたいという人はいそうですよ。」
坂田「いいですね。南畑で音楽やダンスのイベントがあってもいいですよね。そもそもこんな雰囲気の場所なかなかないですもん。ただ、場所が分かりにくいのと、駐車場がないのと、課題はたくさんありそうですが。」
長尾「空想なんですから~。坂田さん、そんな細かいこと言っちゃだめよ~。」
坂田「すみません。」
長尾「むしろ、この隠れ家のような感じを売りにしていくのはどうですか?1日何組限定とか?」
坂田「この逆境をむしろ売りにする感じですか。それいいですね。それでいきましょう!業態は何ですかね。レストランもいいですし、美容室もありですね。あと、アロマセラピーやエステ的なものも。癒しとか相性良さそうですよね。」

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長尾「どんな業態にするにしても、お店にするなら屋根はほしいですね。雨が降ったらお休みというのもいいですが、このままだと物を置くスペースもないしなぁ。」
坂田「そしたら、この建物の中にもう1つ建物を建てたらいいじゃないですかね。小さな小屋を建てたら。建物の中いっぱいに建てるのではなくて、半分か4分の1ぐらいの大きさのものを建てて、残りは中庭みたいにするのがいいかなと思います。」
長尾「あ〜、なんかイメージができてきました。」

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坂田「ちょっと話はずれますけど、中から外を見るとなんか風景が切り取られて絵画のように見えますね。」
長尾「いきなり話が変わりましたね(笑)。確かに絵みたいですね。これを活かすために小屋は入口から離れたところがいいかもですね。」
坂田「そうすると、なんか小屋の屋根の上に登ってテラスみたいに使えるようにしたいですね。狭いですが、いろいろな空間を楽しめるような場所になったらいいなと思います。」
長尾「空間のイメージはできてきましたが、業態はどうしましょうか?」
坂田「難しいですね。いろんな可能性があるんで一つに絞るのは・・・。いったん一度、外に出てみましょうか?」

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長尾「いいですね。」
坂田「いいんですよね。いろいろできそうですよね。」

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長尾「この高台にある立地も活かしたいですね。」
坂田「お〜、いろいろと欲が出てきましたね。確かにこのポテンシャルは、すべて活かしたくなっちゃいます。ある意味、何をしないかを決めていくのが大切なのかもしれません。」

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長尾「なるほどですね。それか、特に何もせずに、音楽やダンス、演劇、映画の上映会、トークイベントなどのイベントスペースとして使うってのもアリですね。用途が決まるまで。写真スタジオなんかも絵になっていいかも」
坂田「でも、用途や業態を決めないと企画の趣旨としては・・・。空想は膨らんでいきますが、ここは我慢して1つに絞りましょう。」

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長尾「う~ん、難しい・・・・・。そうだ!本屋さんはどうですか」
坂田「おー、いいかも知れませんっ」
長尾「実は、南畑には本屋がないんですよね。那珂川町自体も本屋がないって聞いていますよ。」
坂田「なるほど、確かにここならわざわざ来たくなりますね。こんな空間で本を読みたいです。それと、本屋なら電気も水道もいらないですね。」
長尾「暗くなったら、蝋燭の光だけでっていうのも雰囲気ありますね!」
坂田「森の中に隠れた本屋さん。」
長尾「素敵!」
坂田「いや、ほんとにこれ出来たらすごいっすよね、森の本屋さん、立候補者求む!」
長尾「求む!(笑)、いや~空想楽しい。」

(終)