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INTERVIEW

縁の下の力持ち

インタビューアー / 福岡R不動産

[那珂川町役場(現:那珂川市役所)職員] 神代賢治さん /重富雄太さん

SUMITSUKE那珂川の活動をはじめ、南畑地区を盛り上げる動きをしっかりとサポートする、まさに縁の下の力持ちです。

SUMITSUKE那珂川は、那珂川町役場の「南畑地区移住促進事業」として活動しています。今回は、行政の立場からSUMITSUKE那珂川を支える縁の下の力持ち、那珂川町役場 経営企画課の神代さん・移住促進事業の初期から携わってきた重富さんにお話を伺った。
(※文中「那珂川町」「那珂川町役場」は取材当時、現在は「那珂川市」「那珂川市役所」になります。)

今日はよろしくお願いします。いきなり余談ですが、実は重富さんの地元は福岡ではないとか。あえて地元から離れた場所で、町役場での仕事を選ばれたのはどうしてですか?

重富:福岡の大学を卒業したあと、どこで働くかはずっと考えていたんですが、最終的に那珂川町を選んだのは、市制移行を目指してがんばっている、パワーがある自治体だなと思ったからですね。そのときは、漠然と「人の役に立つ仕事がしたい」という思いがあったんです。
地元は鳥取なんですが、高齢化が進んでいて、私の祖母もひとりで暮らしているんですよね。「もし体調が悪くなったら」「もし今の家で暮らせなくなったら」といったことを考える機会が身近にあったこともあり、そういった状況にある方のサポートができればな、と考えていたので、南畑の地域活性化に関われたのは自分としても、とてもやりがいを感じています。

逆に、神代さんは那珂川町のご出身なんですよね。

神代:そうなんです。私の実家も南畑地区に近い中山間地域で。今は少し離れて暮らしていますが、やっぱり地元に関わっていたいという思いはありましたね。

経営企画課では、南畑地区移住促進事業やNPO,ボランティア団体に関することをはじめ、様々な業務を扱っています。

改めてになりますが、那珂川町はどんな町だと思われますか?

神代:福岡市へのアクセスの良さは、やっぱり大きなメリットだと思います。
博多南駅まわりをはじめとした市街地はもちろん、たとえば南畑地区のような中山間地域からでも1時間かからずに福岡市中心部まで出られる場所というのは、実はあまりないのかなと。
重富:そんな便利さがありながら、中ノ島公園で川遊びをしたり、九千部山に登ったり、気軽に自然に触れることができるのも素直に魅力ですよね。

いよいよ市制移行も目前の那珂川町、最近は人口も増えてきていますよね。

神代:そうですね。その中でも実は那珂川町って子育て世帯がとても多くて、なんと14歳以下の子どもの人口率では県内3位なんです。ですから子育て関連施策には力を入れています。最近は、子育て世帯向けに発行していた情報誌「nobi nobi」のポータルサイトを作りました。子育て関連の支援って対象年齢が色々あったりして複雑なんですが、子どもの年齢を登録しておくとぴったりの支援を教えてくれるんです。これからはもっと使いやすくなると期待できますね。

子育てポータルサイト「のびのび」では家族に合ったサービスを探すことができます。

重富:入館料無料で利用できる那珂川町のふれあいこども館(正式名称:那珂川町複合児童福祉施設)は、近隣の自治体からも人が集まるくらい人気ですね。利用者の割合は、だいたい町内の方が6割、町外の方が4割くらいです。同じ敷地にあるミリカローデン那珂川でもおはなし会やミニコンサートが開かれていて、こちらも子育てファミリーにはうれしいラインナップです。

子どもたちの遊び場やミニ図書館がある「ふれあい子ども館」には、町外からもたくさんの親子連れが集まります。

神代:子育てとは少しちがうんですが、2月には町と東京おもちゃ美術館で「ウッドスタート宣言」に調印しました。4月からは誕生祝い品として、町内産の木材で制作した木のおもちゃをプレゼントする取組をはじめました。小さい頃から町産材に触れて親しみながら育ってほしいという願いを込めています。

たしかに、SUMITSUKE那珂川から移住された子育て世代の方も、こども館やミリカローデンはよく利用されるそうで好評です。南畑地区での移住促進事業についてはどのように見られていますか?

重富:南畑地区の特徴は、行政区長さんたちが率先して取り組んでいるところだと思うんです。地域の皆さんの熱い想いがあるからこそ、わたしたちがそれをサポートすることでもっと先に行ける。移住事業の始まるときも、区長さんたちが空き家の情報を集めてくれたり。住んでいるみなさん自身が「地域のために」と同じ方向を向いてがんばっているからこそ、その活動の結果として南畑地区が注目されるようになっているんだと思います。
神代:事業としては、すでに移住実績ができたり、昨年4月には「移住交流促進センターSUMITSUKE」ができたりしていますよね。地域内でも事業の雰囲気が浸透し始めていていて、最近では地域の方々から自主的に寄せられる空き物件の情報がだんだん増えてきたりと、地域内の変化が見えてきている気がします。これも、地域と足並みをそろえて継続してきたからこそだと思っています。

中ノ島公園の敷地内にある移住交流促進センター「SUMITSUKE」。

南畑地区住民の動きから始まった地域活性化協議会「南畑ぼうぶら会議」。南畑美術散歩や軽トラ市などの取組で南畑地区を元気にしています。

重富:南畑の面白さはもっと知られてほしいですね。「南畑の本2」でも取り上げられていましたが、南畑幼稚園にうかがったときは、子どもたちが裏の畑を使っていろんなことをやっているのに驚きました。畑や自然と触れ合うことが日常になっていて、南畑の子どもたちはほんとうにパワフルなんですよね。作家さんを招いた南畑小学校のカリキュラムとか、地域の方たちが自主的に協力して勉強を教える質問塾など、南畑の地域ぐるみでの「アツさ」みたいなものを感じます。

南畑地区のリアルな暮らしを発信する「南畑の本」。これを見て、実際に南畑地区をたずねて来られる方も。

神代:外への発信という意味では「南畑の本2」のようなツールのおかげで認知度は高まっているなと感じますね。この「SUMITSUKE那珂川」のWebサイトも発信ツールとして評判いいんですよ。空き家バンクの情報がただ載っているだけではなくて、地域の暮らしが分かるインタビューやたられば不動産のようなコンテンツもあって。実は他の自治体さんからも、あれはどうやって作っているんですか?と聞かれることがたびたびあるんです。

サイトユーザーだけでなく、同じような地域課題に取り組まれている自治体からも注目されているのはうれしいですね。それでは、今後の那珂川町、南畑地区にはどんな風になってほしいと思われますか?

神代:町全体の年齢が若いことは先ほどもお話したんですが、本当に元気な町だと思いますね。町の色々な場所で動いている人たちがいることは役場にいても分かります。那珂川町役場にも若い職員がとても多くて、活気にあふれているんです。この勢いのある部分を押し出して、いろんなことに挑戦できる風通しの良い役場になるといいですね。でも、南畑地区を見ていると、若者だけでなく、高齢者のみなさんもめちゃくちゃ元気だなと思います(笑)。多くの世代がそれぞれの良さを出しながら勢いをつけていけたらいいですよね。今は市制移行のタイミングで色々な取組をやっていて、例えばカウントダウンボードを作ったりとか、そういう小さなことがきかっけでも、もっと自分たちの町、自分たちの市だ、と誇りを持ってもらえるようにしていきたいです。そのための働きかけを町役場の立場でできればと思います。

重富:那珂川町の大部分を占めている中山間地域がどうなっていくか、というのは町全体の未来にとって重要だと思っています。南畑地区の場合は地域の想いが強くて協議会を作ったりするような動きが先に地域から起こったんですね。それを町役場がサポートする形で、これが理想のスタイルだと思います。行政主導で押し付けっぽくなってしまうと、やっぱり続かないと思うので。ただ一方で、南畑地区は典型的な中山間地域なので、今後「南畑モデル」みたいな形で周辺地域の課題解決にも応用できないかな、とは思っています。建設中の五ヶ山ダム周辺にも、キャンプ場やスポーツ施設など拠点になる場所ができる計画がありますし、中山間地域はこれからますますアツいですね。

最後に、個人的に南畑地区にこんなものがあればいいのにな〜というものを教えていただけますか?

重富:ごはんを食べられるところがないのが、本当に惜しいですよね。南畑の食材がおいしいということは「南畑ぼうぶら市場」の影響もあってだんだん認知度が上がってきていると思うので、それが食べられる場所、ついでに言えば地域の人と触れ合える場所があれば絶対にいいと思うんですよ。
神代:そうなると泊まれる場所もほしくなりますよね。南畑の食材が味わえて、地域の人ともわいわいやれるゲストハウス。
重富:たしかにそうですね!ゲストハウスほしいなあ……ここはやっぱり「たられば不動産」に期待しましょうか笑

移住促進事業はもちろん、市制移行にむけて様々なことが動き始めている那珂川町。そんな地域の活動を、陰からしっかりとサポートする縁の下の力持ち、そのありがたさを改めて感じました。若い人が多く、地域のパワーに溢れている那珂川町が、これからもっとわくわくする場所に変わっていく、そんな未来が見えるような気がします。