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INTERVIEW

コツは楽しむこと。DIYで作る家族の暮らし。

インタビューアー / 長尾牧子

[会社員] 齊藤 知子さん / 雅文さん

現在の家にひとめ惚れしたことがきっかけで、福岡市中央区から南畑へ飛び込んできたご家族。ふたりの息子さんたちと4人、初めてのことばかりの新天地で色々なことにチャレンジするうち、いつの間にかもう4年。今では近所のおばあちゃんたちのことを「おかあさん」って呼んでます。

国道沿いにあった古家付きの土地にひとめ惚れして、これまで縁もゆかりもなかった南畑の埋金地区へ移住を決意された齊藤さん。ボロボロだった古家をリノベーションで生まれ変わらせたり、地域の運動会に参加したり、畑仕事を教わったり……暮らしを楽しむ達人に南畑暮らしの醍醐味を語っていただいた。

今日は貴重なご家族の休日にありがとうございます。まず、南畑地区へ移住されたきっかけを教えていただけますか?

知子さん:きっかけはマイホームの購入でした。長男が小学校に上がるタイミングで検討し始めたんですが、偶然通りかかったこの家に「売物件」の看板が出ているのを見て、これだ!と思って決めたんです。もともと自宅でカフェをやりたいと思っていて、ほどよく自然豊かなのに国道沿いで見えやすいこの場所は思い描いていた条件にぴったりでした。
雅文さん:とは言っても、実は南畑にはまったく縁がなくて、地域のことは何も知らないまま飛び込んできたんです。だから初めは何もかもが予想外のことばかりでした。

理想的な物件に惹かれてとのことですが、今のお家は当時かなり傷んでいたと伺っています。今の姿からは想像できないですが、そのあたりは気になりませんでしたか?

雅文さん:そもそもこの物件は古家付き土地として売りに出されていて、家は壊すことが前提だったんです。壊すのはもったいないと思って色々な業者に相談していましたが、あまりに傷みすぎていて断られることばかりで……。そんな中ひとつだけ引き受けてくださった建築会社があって、そこでとても大がかりなリノベーションをしてもらったんです。
知子さん:新しいプランについても一緒にしっかり考えてもらえて、薪ストーブをつけたり、小さなお籠もり部屋を作ったり、本当に自分たちだけの理想の家にしてもらえました。その家作りの体験が印象的すぎて、その後、その建築会社に就職してしまったくらいです(笑)

家づくりが思わぬ縁につながったんですね。物件がきっかけの移住ですと、南畑地区のような地域のつながりがしっかりしたコミュニティには、初めは戸惑われませんでしたか?

知子さん:以前は福岡市内に住んでいたので、ご近所づきあいはほとんどありませんでした。南畑ではおこもり(地域の集会)や運動会など、地域の催しがたくさんあることを引越してきてから知ったので、最初はとてもびっくりしました。でも、そういう習慣なら、と一度地域の集まりに出てみたら、埋金のみなさんがすごく親切にしてくださって、すぐに「ご近所づきあいって楽しい〜!」と思っちゃいました。
雅文さん:夫婦で埋金の運動会に出たら二人三脚で優勝してしまったりして、一気に有名になってしまいました(笑)。やっぱりここも若い世代は少ないからですね。私は消防団にも入っていたんですけど、こっちはなかなか土日が空かない仕事柄、参加が難しくてやめてしまいました。そういうところは無理をしなくてもいいんだって、そういう感覚も暮らしているうちにだんだん分かってきましたね。
知子さん:近所に畑を借りているんですが、野菜の作り方なんかも地区の大先輩に教えてもらっていて、うちでは「おかあさん」って呼ばせてもらってます。今では埋金の先輩女子たちと「ウメガネーゼ」ってLINEグループも作っているくらいですよ。

子育て環境としての南畑地区はいかがですか?

知子さん:小学校の人数が少なくて、学校全体の子どもたちがみんな友達なのがとてもいいと思います。学年を超えた縦のつながりがしっかりしているのは少人数ならではだと思うので。人数が少ない分だけPTAの役員が何度も回ってきたりしますが、親同士もみんな知った仲なのであまり負担には感じないですね。
雅文さん:授業の内容もとてもいいです。田植えや稲刈り、餅つきがあったり、お出かけ授業が多いのも南畑ならではですね。発表会ではみんなが主役になれるのも、他ではないことだと思います。

南畑地区で暮らしてこられて、困ったことはありましたか?

雅文さん:確かに福岡市内とは生活の色々な部分が変わりました。でも、それは困ったことというより、単純にライフスタイルが変わったな、という感じです。たとえば、通勤はやっぱり時間がかかるので、以前より早く家を出るようになったし、食料品や日用品の買物も遠くなったので、週末にまとめ買いをするようにもなりました。食材の保存用に、冷蔵庫と別に冷凍庫も買いましたよ。
知子さん:家の周りが土砂災害警戒区域に入っていたのは少し不安だったんですが、近所の人に話を聞いて回ったところ、特にこの近くで大きな土砂崩れが起こったことはない、と分かったのである程度はもう安心しています。去年の大寒波で雪が積もったときは、さすがに街の方へは降りられなかったんですが、もう仕事にも行けないし、仕方ない!と割り切って、家族全員で雪遊びをしました(笑)。こんな風になんでも楽しんでしまう家族なので、特に困っていないのかもしれないですね。

最後に、これから南畑地区でこんな風に暮らしていきたい、南畑地区がこんな風になってくれたら、という思いがありましたらお聞かせ下さい。

知子さん:自分たちのことで言えば、長年の夢だった自宅でのカフェは近いうちに実現したいですね。この土地はもともと建物が2棟あったんですが、母屋と別のもう1棟は、内装を外した素の状態にしてあるんです。その別棟を改装してカフェにしたいなと。アメリカのヴィンテージ雑貨が大好きでずっと夫婦で集めているので、そのショップも一緒にできたら素敵だなと思っています。
雅文さん:南畑地区のことで言うと、陶芸や染め物などの作家さんがたくさん住んでいらっしゃることはもっと知られてほしいです。私たちも引越してきて初めて知ったんですが、もっと町外の方たちも参加しやすい公開イベントがあったりするといいなと思いますね。小学校では作家さんたちが教える授業がありますが、とても貴重な体験です。続けてほしいと思います。
知子さん:あまり知られていない良い取り組みがたくさんありますよね。そういったこと知ってもらって、ファミリー世帯がもう少し増えてほしいですね。昔はたくさん子どもがいて賑やかだったという話を地域の方から聞くと、いいなあと思いますから。

移住のきっかけは理想の物件を見つけたことでも、その後の暮らしの中で、これまでと違う価値観を柔軟に受け入れ、どんなことも楽しみながらチャレンジしてきた齊藤さん一家。家族の夢をかなえることも、南畑地区をもっと素敵な場所にしていくことにつながっていきそうな予感がします。