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INTERVIEW

「息ができるという感覚」

インタビューアー / (株)南畑ぼうぶら会議 衛藤志穂

トーマス・ジュリアンさん / ゆきこさん

まちの喧騒から離れ南畑に引っ越して4年。イギリス出身のジュリアンさんは、英語でのプログラミング教室を開講。妻のゆきこさんは、これまでの食に関わる仕事の経験を活かし、イギリス菓子「Thomas Table」で、みんなを笑顔に。 家族の未来を自分たちの手でデザインし、自分たちらしい居場所を見つけたトーマスさんご家族。

「ここに来てから、ちゃんと息ができるようになったんです。」

インタビュー中、ふと、ジュリアンさんが発したその言葉に、お二人が感じている南畑での暮らしの本質がぎゅっと詰め込まれているような気がしました。移住前は生活利便性もいい住宅街で暮らしていたトーマスさんご家族。お子さんが2人になり手狭になってきたことと併せて、「自分たちらしく暮らせる居場所を見つけたい」という想いで移り住む場所を考え始めたのが移住のきっかけなんだとか。南畑に来て4年、お二人の目で感じてきた「移住と地域での暮らし」をお伺いしました。

(DIYがお得意なジュリアンさん。ご自宅をリノベーションして素敵な空間に)

−スミツケの窓口に来ていただいた当時は、間近に迫りつつあったお子さんの小学校入学までに物件を見つけたいという時間的制約がある中で場所をお探しになっていたかと思います。いろんな地域を見てまわられていたという記憶もありますが、移住を考えだした経緯や最終的に南畑を選んだ決め手はなんだったんですか?

ジュリアンさん:もともと東京に長く住んでいて、福岡に来てからは街中の集合住宅で暮らしていました。最初は漠然と、「近い将来に自分たちの家が欲しいな」と思っていたんですけど、実は自分たちにぴったりの場所を見つけるまで、4年ほどかけてあちこち探し回っていたんです。

糸島も良かったし、うきはも気に入って何回も足を運びましたね。南畑も中ノ島公園に遊びに来ていて良さそうな地域だなと思っていました。
二人目の子どもが生まれて家が少し手狭になってきたことと併せて、上の子が小学校に入学するまでに自分たちの居場所を見つけたいというのがあったんです。いよいよタイミングが迫ってきたこともあって、踏み込んでゆきこと話をしました。その中で、「物件の条件とか自分たちの理想とかもあるけど、まずは心(気持ち)の部分でどの地域が1番気になってる?」って聞いてみたら、返ってきた言葉が「南畑」だったんです。

ゆきこさん:確かに当時はいろんな地域を見てまわっていましたね。自然の多い場所で暮らしたいけど、福岡市内にもある程度行きやすいところがいいなっていうのがあって。うきはは、自然は豊かだけど私たちにとってはちょっと遠過ぎたというか。福岡市周辺からエリアそのものが離れてしまうから、基本的にはうきは地域内でしか動けなくなるなって思ったんです。糸島でも探してたんですけど、ただ、人気があるからいい物件はなかなか出てこないですよって不動産屋さんに言われて。しかも糸島でも自然の多いエリアになるとそれなりに福岡市内に出るのも一苦労な感じがしてたんです・・。

そう考えると、那珂川市って本当にいい環境ですよね。博多や天神への絶対的な距離が近くて、車さえあれば都市部へすぐに出られるのに、南畑のような豊かな自然がすぐそばにあって。この都市と自然の近さが両立してる立地は、いざ探してみるとちょうどいい場所が実はありそうでなくて、なかなか珍しいことなんですよね。

ジュリアンさん:僕はイギリスで育って、海外から日本に来ているから、極端に言ってしまえばどこでも大丈夫。だから、ゆきこができるだけ納得できる場所が見つかればそこを最優先しようと思って、次の日にはもうスミツケに行きました。

それから程なくして、タイミングよく現在のご自宅と出会ったトーマスさんご家族。ゆきこさんの想いを聞いたその翌日、ジュリアンさんがすぐに行動に起こしたそのスピード感と行動力こそが、新生活を切り開いた最大の要因かもしれません。

(お料理が大好きなゆきこさん、最近は食べることに関わる活動もされています)

−すぐに来てくださったんですね!タイミング良く見つかって本当に良かったです。それから実際に南畑に住み始めてみてからはどうでしたか?トーマスさんのご自宅は、南畑の中でも奥まった場所で道も細かったりと慣れるまで大丈夫かなと気になっていました。

ゆきこさん:最初は不安もありました。でも、結果的には「意外と大丈夫だったな」と感じています。暮らし始めはきっとご近所さんも「どんな人が来たんだろう?」って気になられていたと思うし、私も大丈夫かなって心配もありましたけど、幸いにもお隣さんがすぐに仲良くしてくださって。それに地域内に同じ年頃のお子さんがいるご家族がいたのも大きかったですね。それで「ここならうちの子も大丈夫」と思えたことで、生活全般もわりとすぐに馴染むことができましたね。

あと、地元の方は細い道でも、車で「サー!」って軽快に抜けていくから(笑)すごい!ってびっくりしました。

−ジュリアンさんも地域のコミュニティにすっかり溶け込んでいる感じがしますが、いかがでしたか?

ジュリアンさん:引越ししてくる前にスミツケの窓口で話もしっかり聞いていたし、ある程度コミュニティ感があることはわかっていました。逆に僕はそれを期待していたというか、絶対に入りたいって思っていましたね。ゆきこの方が実家がコミュニティの強い地域だから、南畑に住む前は田舎に住むのはどうかなっていう不安が大きかったよね?

ゆきこさん:そう、ありました。私は、街と比べると人間関係もとても密な田舎で育っていて、もちろん良いところもあるんだけど、大変そうだなって思う部分もあって、だから、南畑はどうなんだろう…っていうのは結構気になってて。でも、実際にここに住んでみると、みんなとても付き合いやすいって思いましたね。親切にしてくださるんですけど、近過ぎず遠過ぎず距離感がいいっていうか。都会が近い地域だからですかね、田舎でも人付き合いのバランスがちょうどいいんですよね。

−ゆきこさんが言われている距離感の話はとてもわかります。特に移住者のみなさんはそれをよく言われるんですよね。顔の見える関係性になっておけば、困っている時は優しく手を差し伸べてくれるけれど、必要以上にグイグイくる感じでもなくて、私は、この「ちょうどいい距離感」が南畑の隠れた魅力だと密かに思っています。そう言えば、ジュリアンさんは消防団にも参加されたとか?

ジュリアンさん:はい。しばらくは家の片付けや改装をしていて忙しくて時間が取れなかったんですけど、落ち着いてから少しずつできる範囲で参加するようになりました。僕が所属しているところはそんなに人数もいなくて、頻繁に何かがあるわけではないので、集まりも月1回ぐらいでちょうどいい感じです。

あと、お隣さんには、もう言葉にできないほどお世話になっています。畑仕事のことを教えてくれたり、機械を貸してくれたり。昔ながらの自然な助け合いが、ちゃんとここには生きているんですよね。ある時、山奥で火事が発生して、僕も消防団で出動したんですけど、あれっ!気づいたらお隣さんが横にいる!って(笑)。消防団の現役メンバーじゃないけど、地域の困りごとがあったら駆けつけてみんなと協力しているんです。この地域での人と人の関わりってそういうことですよね。

ゆきこさん:ほんとに優しくて、いろいろ教えてくれるし親切にしてくださるよね。

冗談混じりに笑うトーマスさんご家族の地域に溶け込もうとする温かい姿勢に、私も地域の仲間として、とても頼もしく感じました。

(広い畑には無農薬のお野菜がたくさん!)

−本当にいい関係性ですね。移住されてもう4年が経ち、すっかり地域の一員として溶け込んでいらっしゃいますが、この4年間を振り返って他にも「ここで暮らして良かったな」と感じる瞬間はありますか?

ゆきこさん:ここはずっと変わらない。その変わらなさが、私は好きかも。

−というと?

ゆきこさん:この場所はきっと何年経っても変わらないと思うんです。その感じがすごく好き。うちは集落の中でも奥の方なので用事がない限り誰も来ないし、人や車がそんなに通らないところも気に入っていて、一日中カーテンを開けている日もあるし、この場所に広がるこの風景がすごくいいなって。

ジュリアンさん:少し言葉を言い換えると、ここに来てから、「ちゃんと息ができる」ようになったんです。もちろん空気の話じゃなくて「深呼吸ができる」そういう感覚です。

−深呼吸ができる、ですか?

ジュリアンさん:そうです。南畑に来る前は、気持ち的には仕事に行って、ご飯つくって、そして寝るだけ…という繰り返しの毎日で、子どもが少しドタバタしただけでマンションの下の階の人に迷惑になるから「静かにしなさい!」と注意しなければならないし、大人も子どもも、なんだか日々の生活で気を使い過ぎていて、息がつまる感覚でした。でも、ここに来てからは変わりました。朝起きた時やご飯の前、外に椅子を置いて景色を眺めながらただ深呼吸をする。この何気ない時間が幸せなんです。そして子どもたちは思いっきり走り回っていて。

−わかります。私もマンション暮らしの時、息子が家の中でボール遊びをするたびに「もう勘弁してくれー!」と叫んでいたことがありました。でも、南畑に帰ってきてからは心にゆとりが生まれました。

ジュリアンさん:そうなんです。心にゆとりが生まれたおかげで、「次はあれをやってみよう!」って考えてみたり、やりたいことが浮かんできて、ワクワクする時間が増えました。この自然や風景もそうだし、南畑の環境は僕らにとって心に良い影響を与えてくれた気がします。

 

(何物にも変えがたい窓先の風景です)

−深呼吸ができるって、すごく素敵ですね。子育てもされているトーマスさんご家族ですが、移住されて日々の暮らしや子育ての視点で気になったことや大変だなって思うことはありますか?

ジュリアンさん:そうですね。最初はスーパーがないなって(笑)。でも、慣れるじゃないですか、ないものは仕方ない。出かけた時にまとめて買ったり、違う方法を考えればいいと思ったんです。ただ、慣れるといってもちょっとしたことでも車移動をしなければならないのはありますよね。例えば、子どもがちょっとそこまで友達の家に遊びに行きたいときも意外と遠くて車で送ることもあります。

ゆきこさん:そうそう。あと習い事の送り迎えが大変です。子どもが自分で歩いて行ける場所にあれば、どうぞどうぞ!って行かせてあげたいんだけどね。でも、運動系の習い事は週に何回も練習があるし、仕事しながら送迎ができるかなとか、時間帯とか距離とか、どうしても現実的な心配事が先に立ってしまって。親の都合で子どもの選択肢を狭めてしまうのは、やっぱりどこか可哀想だなという気持ちなりますね。

−私も子どもの習い事で週1回は福岡市の中心部まで送り迎えをしています。その日は、下の子を先にお風呂入れて〜とかバタバタで大変です。習い事と言えば!ジュリアンさんは英会話プログラミング教室を始められたんですよね?南畑で英語とプラグラミングが習えるって革命的じゃないですか!

ジュリアンさん:そうなんです。実は1年前ぐらいから計画していたんです。もともと何かを自分でやりたいと思っていて、そんな時、息子が「プログラミングを習いたい」って言い出したんです。僕はパソコン関係に詳しいから、プラグラミング教室ってどんなことやってるんだろうって調べてみたんですよね。これなら自分で勉強したらできそうだなって分かったので、ちょうど学べる授業があった放送大学に通ってしっかり知識を深めたんです。そして2024年4月に英語プログラミング教室を開講しました。教室に入ったらみんな基本的には全て英語で話すルールです。送迎の親御さんもですね!(笑)

 

(プログラミング×英語が同時に学べる場所は他にはなかなかないですよね)

 

(プログラミングを使ったユニークな学びも)

−プログラミングと英語を同時に学べるって、ジュリアンさんならではの合わせ技!しかも街中の教室よりも月謝も良心的ででチャレンジしてみたい気持ちになります。これはぜひ興味ある方は一度体験に行ってみてほしいです。そして、ゆきこさんは「Thomas Table」という名前でイギリス菓子の製造販売をされていますよね。本当に美味しくて私もよくいただいています。

ゆきこさん:ありがとうございます!もともと20代の時に東京のカフェで働いていたり、仲間とケータリングをずっとしていたんです。30代は子育て中心の生活だったんですが、たまにポップアップ的には販売もやっていて。だから次は自然の多い場所で家や工房を見つけたいと考えていました。お菓子は特に材料にこだわって作っていて、地域内でもいくつかの場所で販売させてもらっています。

(写真を見ているだけでお腹が空いてきました)

−Instagramでゆきこさんが作るお料理を見ていますが、とにかく彩りがきれいでうっとりしちゃいます。機会があったらゆきこさんの料理をたくさん食べてみたいです。

ゆきこさん:今は動ける時間の制約もあるし、お菓子づくりがメインになっているんですけど、本当はもっと広く食に関することがやりたくて。少人数のイベントやワークショップを密かに構想中なので、その時はぜひ来てください!「自分の畑で採れたものを全部プレートに収める。」ってこともいつかやってみたいなって思っています。

(お二人の笑顔を見ていると南畑での暮らしを自分たちらしく楽しまれている雰囲気がして嬉しくなりました)

−絶対に行きます!お話を伺っているとお二人の行動力は本当に素敵だなって思います。最後になりますが、これから南畑への移住を希望している方にアドバイスをいただけますか?

ジュリアンさん:まずは良くリサーチすることは当然だと思うし、皆さんそれはされていると思います。あとは、柔軟な見方や考え方を持つこと。都会でも田舎でも良いところも大変に感じることも両方ありますよね。だから、ここに住むと決めたら、不便さも含めてその場所を受け入れ、そこにある良さに目を向けて前向きに捉えること。それが、この土地で暮らしを心から楽しむための秘訣だと思っています。それと都会から来たら、生活のリズムやペースは正直全然違います。だから、心の中ではもっと効率よくやったらいいのに!とか思うこともあるんですけど、 でも見方を変えるとゆっくりしている分、落ち着いて考えることができる。それが南畑の良さなのかもしれないですね。

ゆきこさん:ジュリアンも言ってるように、しっかりリサーチすることですね。その上で、自然が多くてゆっくりした生活をしたいと考えている人には、本当に南畑はおすすめな場所だと思います。人によってどのくらいの環境を望んでいるかはそれぞれだと思うんですけど、南畑は街も近いから、都会から移り住んでもコミュニティや暮らしは極端に田舎すぎるって感じることはないはずです。そのバランスが南畑のいいところだと思います。

ジュリアンさん:あと地域のコミュニティには、無理せず可能な範囲で参加すれば、自分たちの暮らしにプラスになることが多いというのは伝えたいですね。つながっていくと地域の方が普段から気にかけてくれたり、何かあったら助けてくれたり、暮らしが楽しくなってくると思います。

(お庭で摘んできたお花がかわいい)

息ができる、ということ。今回のインタビューで一番心に残った言葉でした。心にゆとりが持てれば、自分たちのペースで自然体で暮らしを楽しむ気持ちの余裕が生まれてきます。それに大きな心で子どもたちの成長を見守ることもできる。その大切さは、南畑で暮らす私自身も一人の親として実感しているところ。

「不便なところもたくさんある。でもその不便さを上回る豊かさがここにはある。」これが、南畑で暮らすことのリアルなのかもしれません。

トーマスさんご家族が南畑で見つけたのは、単なる住居ではなく、ちゃんと息ができる暮らし方。 4年間悩み抜いた末にたどり着いたこの地で、お二人は今、新しい挑戦を始めています。 それは、ただ暮らすだけでなく、家族の未来をデザインできる自由な暮らしそのもの。 トーマスさんご家族さんならではの視点は、静かに地域に新しい風を吹き込んでいる気がします。 自分たちらしく暮らすお二人のこれからの活動もとても楽しみです。 「南畑」を選んでくれて本当に良かったなって、そんなことを考えながら取材後の帰り道で私もひとつ深呼吸。南畑の風が、いつもより心地よく感じられました。

ジュリアンさんが運営する英語プラミング教室の情報はこちらから
Thomas Coding  in English
Instagram:
thomas_coding_in_english

ゆきこさんが作られているイギリス菓子の情報はこちらから
Thomas Table
Instagram:thomastable.yt

ご興味がある方は是非お問い合わせされてみてください!