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INTERVIEW

地域ぐるみの安全安心

インタビューアー / 衛藤 志穂

[春日警察署 南畑駐在所] 山本 浩廉さん

平成31年3月に南畑駐在所に配置。北九州市内の警察署や県警本部の刑事部門で10年程勤務された後、南畑駐在所配置となりご家族で南畑へ。 親しみやすい笑顔と責任感あふれる行動で南畑の安全安心を守ってくれる頼もしい存在。

国道沿いに佇む小さな平屋の建物、その玄関の上にはキラキラと金色のエンブレムが輝いています。ここは南畑駐在所。
那珂川、春日、大野城で唯一となるこの駐在所では、住み込みの警察官の方が昼夜通して地域住民の安心安全を守ってくれています。ここでは日々どんな事をされているんだろう。駐在所の中ってどんな風になっているんだろう。
普段なかなか聞くことができない駐在さんの知りたいことが多すぎて興味津々!
昨年南畑へ配属され「駐在さん」と親しまれる山本さんに、お忙しいお仕事の合間を縫ってお話を伺いました。

 

南畑に来られて一年ほど経ったかと思いますが、駐在所でのお仕事はいかがですか?

実は私はずっと駐在所を希望していたんです。ですので念願の駐在所勤務なんですよ。

よく都会で見かける交番には、たくさんの人が働いていますよね。
でも日中は事件や事故などの対応が多いので、地域との交流を持ちたいと思っていても実際には難しいというのが現状なんです。

私はどうしても地域の人と関わる仕事がしたかったんです。
地域の役に立つには、まずは地域のことを知ることが一番大事だと思っています。何かあった時、どこの誰の話なのかも分からない……では困りますからね。
顔と顔を合わせて信頼関係をいちから築いていく。そうすることによって少しずつ地域のことを理解できるようになっていきます。地味なことですが、何事も一つひとつの積み重ねが大切なので、そのことをいつも考えて取り組んでいます。

それに、駐在所は交番と違って一人で管轄内を任せてもらえるんです。
そういった点でも、この仕事にはとてもやりがいを感じていますよ。

生活環境として一番変わったことは、仕事をしながら子育てにも関われるようになったことですね。
駐在所勤務になる前はなかなか家にも帰れなくて、休みも少ないので子育てに関わる時間もなかったんです。
今では職場と家が同じですし、警察官として働いている姿を子どもたちに見せることができるってありがたい環境ですよね。

駐在さんの一日のお仕事って具体的にどんなことをされているんですか?

朝は子ども達の元気な挨拶で1日が始まります。
平日の朝は、南畑小学校の下の横断歩道で子どもたちの見守りをしているんです。
誰がまだ登校して来ていないかも、今ではバッチリ分かりますよ。
いつも登校して来る時間に生徒がこない時は、近くまで様子を見に行ったり、巡回パトロールをしている区長さんと連携して家の近くまで見に行ってもらったりもします。

朝の見守りが終わると駐在所に戻り1日の業務を確認して、デスクワーク。
日中は110番通報の応対や、落し物の対応、他にも地元の方が来られるのでご相談に乗ったりもします。

その合間に、地域のパトロールをしています。南畑にはおよそ750世帯ほどあるんですが、一軒一軒廻りながら、何か困っていることはないか、異常はないかなどを確認しているんです。
南畑は小さな区域ですから、こうして市民の皆さんひとりひとりと顔を合わせてお話できるのがとても嬉しいですね。
すぐに名前も覚えていただけて、今ではほとんどのみなさんと顔見知りです。

もちろん南畑での仕事が主となりますが、毎日駐在所にいるわけではないんですよ。本署に出向いて武道の稽古をしたり逮捕術の訓練をしたりもしています。

ご家族で南畑にお引越ししてこられたかと思いますが、ご家族の生活に変化はありましたか?

南畑に来るまでは、お隣にどんな人が住んでいるかさえも分からない状態でした。
正直それが普通でしたから、ご近所付き合いのことを考えることもなかったですね。

でも南畑では、顔が見えるお付き合いが当たり前ですよね。
地域の行事に参加すると、皆さんが子ども達を孫の様に可愛がってくれるんです。
事あるごとに声をかけてくれるので、あっという間に地域に溶け込む事が出来ました。
不入道地区の運動会にも家族で参加しましたし、餅つきにも誘っていただきました。
住んでいる不入道地区だけでなく、他の行政区の行事にも誘ってくださいます。
どこに行っても本当に温かく迎え入れてくれて。とてもありがたいですよ。

道端で会ってもついつい長話してしまうんですよね〜。
でもそれも地域との大切な繋がりなんですけどね。

妻は妻で地域で開催されている料理教室に参加したりと、すっかり馴染んでいます。
子ども達も自然の中でのびのびと成長していますし、家族みんなここでの生活を満喫しています。

お仕事の関係で今後南畑を離れられる時期が来るかと思いますが、今後どんな南畑になって欲しいと思いますか?

そうですね、朝の見守りをしていても感じるのですが、やっぱり子どもが減っていることが一番気がかりです。
この南畑を今後担っていくのは間違いなく子どもたちですから。
この子達を皆さんで守っていって欲しいですし、育てていって欲しいと思います。
そしても子ども達の笑い声がどこに行っても聞けるくらい人数が増えていってくれることを願っています。

そうですよね、わたしたちもがんばります!最後に、南畑のみなさんに伝えたいことをお願いします。

地域の方には本当に感謝の気持ちしかないですね。
パトロールや朝の見守りにもたくさんの方が積極的に関わってくれます。南畑を守ろう!という地域の方の意識がとても強いんですよ。たくさんの大人の皆さんで子ども達を守ってくれているんです。
これはもう昔から続いていることなんでしょうね。なので当たり前のように、地元の大人と子ども達の距離がとても近い。
車で通りすがる時は、必ず止まって声をかけてくれたり、遠くにいたらお互いに大きく手を振りあったり、とてもあったかい地域です。

駐在所には私一人しかいませんが、ここには協力してくださる方がたくさんいらっしゃいます。
どうしても私一人では限界があるところも、地元の結束力が強いので助けられています。
それが結果的に犯罪の抑止にも繋がっているんです。本当に感謝しかないですね。
これからもずっと南畑の安全は、駐在所に勤務する私たち警察官だけでなく、南畑の人達の手で守っていって欲しいなと思います。

インタビュー中にも地元の方からお電話がかかってきたり、道端で話しかけられたり。
自然と周りに人が集まる、そんな優しい雰囲気の山本さん。
どんな時でも満面の笑顔で受け答えをされている姿を見て、地域の方に愛されている理由が改めて分かったような気がします。
それに改めて、山本さんのお話で顔の見える地域コミュニティの大切さを感じることができた時間となりました。