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INTERVIEW

帰ってこられる「ふるさと」を作りたい

インタビューアー / 福岡R不動産

[那珂川町地域おこし協力隊] 高岸春幸さん

山口県下関市菊川町出身。2017年11月に那珂川町地域おこし協力隊に就任。現在は南畑地区の農業をもっと魅力的にPRするため、地域を駆け回っている。

2017年11月、地域おこし協力隊として南畑地区に赴任した高岸さん。現在はSUMITSUKE那珂川にも掲載されていた空き家を拠点に、南畑の農業を盛り上げるため日々活動中。赤茶色の屋根瓦を目印に、お宅へお邪魔すると、とれたて南畑野菜たっぷりのパスタで出迎えてくれた。

高岸さんは山口県のご出身とのことですが、南畑地区についてはどんなきっかけで縁ができたんでしょうか。

20代の頃に知り合った音楽関係の友人が南畑出身だったんです。
僕は山口の出身なので、それまで南畑のことはほとんど知らなかったんですけど、あるとき彼の実家に遊びにきたとき、不入道の滝を見て「ヤバイ!」と思ったんですね。言い表せないパワーのようなものを感じて。こんなすごいところがあるのか、と。
友人のことは前からすごいやつだなあ、と思ってたんですけど、そのルーツはここだったのか、そりゃすごいわけだ、と納得しましたね(笑)。
それで、友人から地域おこし協力隊の話を聞いて、これはやってみたいなと思って応募したんです。
※不入道の滝:不入道地区の不入道観世音にある滝。滝行の場として訪れる人も多い。ツツジの咲く花の名所でもある。

南畑ですごす日常はいかがですか?

まず、空気も水もおいしい!――っていうのはきっと誰でも言ってることですね(笑)。
僕が本当にすごいなあと思うのは、この里山の風景です。竹林や雑木林も、きれいに整備された道も、僕らが普段「きれいだなー」となにげなく眺めている風景は、地域の方たちが日々手を入れながらしっかり守っているからこそなんだ、ということは、ここに住んで強く実感しました。

近所を歩いていてもよく声をかけられていて、高岸さんが地域になじんでいるのがよくわかります。

気さくなご近所の方たちには、本当に助けられています。福岡の方は「来るもの拒まず、去るもの追わず」なオープンでおおらかな雰囲気があると思うんですが、南畑でもその良いところが見えると思います。外から来た僕にも気軽に話しかけてくださる方が多くて、なにかあると必ず声をかけてくださるのでありがたいですね。ご近所のお庭で開催されるお花見会や、お隣のバーベキューなど、何かとお話できる場所に誘ってもらえるのが嬉しいです。

残念なことを挙げるとしたら、今住んでいる家はとっても趣のある、独りにはもったいないくらい贅沢な元空き家なんですが、いかせん忙しくてまだきちんと活用できていなくてはがゆいです!もっと色々したいのに!(笑)
それから、引っ越してすぐにすごい雪の日があって、家の周りにもたくさん積もって身動きが取れなくなったのは印象的でしたね。福岡市内まで1時間もかからずに行ける場所なので、普段はそこまで意識しないんですが、やっぱり自然の厳しさがある地域なんだなあと実感しました。

地域おこし協力隊ではどんな活動をされているんですか?

地域おこし協力隊の職務として、南畑地域活性化協議会のサポートをしています。
具体的に今は、南畑の農家の方への聞き取り調査をおこなって、農作物の総数を把握する仕事をしています。今は、ひとつの畑の中で、いちばん作付をしている作物しかわからないのですが、もっと細かく、南畑でどんなものが作られているのか知りたいんです。
なぜかというと、南畑の農業のポテンシャルを把握したくて。もしかすると、あまり知られていないけれど人気が出そうな作物があるかもしれない。販路の開拓や加工品の製造にも、何を作っているか把握することはきっと役立つと思うんです。
それに、これは南畑地区の将来を見据えた取り組みでもあります。

南畑地区の将来、とはどのようなことでしょう。

将来的に、僕は「儲かる農業」を目指したいと思っているんです。
今、南畑には農家さんがたくさんいらっしゃって新鮮で美味しい野菜ができているんですが、ひとつ問題があって、それは今売っている作物が、クオリティに対して安すぎること。
南畑では有機栽培など先進的なやりかたを試されている方もいらっしゃって、それはとても付加価値の高いことなんですが、これもやっぱり安すぎる価格で売られています。せっかくの資産がもったいないというだけではなくて、これは後継者不足にもつながっています。次の世代へ引き継いでいくため、農業できちんと収入を得られる形にしないといけない、と思っていて、微力ながらそのお力添えができればと思っています。

なるほど。南畑の風景を作っている農業、それがきちんと持続していくためのシステムが、地域全体の持続につながるんですね。

そうなんですよ。
これって当たり前のことなんですけど、「いい地域」って、住んでいる人が幸せで、笑顔で生きがいを感じている地域ですよね。
今、南畑は実際にそういう地域だと思います。ただ、この良さを絶やさず次の世代に繋いでいくためのシステムが必要だと思っていて。
よく聞いてみると、若い人たちにも南畑への地元愛はちゃんとあるんですが、今の社会では進学や就職を機に、生まれ育った場所を出ないといけない仕組みになっていますよね。そこに、地元に残るという選択肢をもうひとつ残したいんです。
僕は南畑も好きですが、やっぱり故郷の菊川町には特別な思いがあります。
そんな風に、「ふるさと」というのはひとつしかない、かけがえのないものだから、たとえ一度は外に行っても、また南畑に戻ってこられるようないい形を作るお手伝いがしたいですね。

地元を愛する若い人たちが、戻りたいと思ったときに戻れる場所があると素敵ですね。ところで、高岸さんは地域おこし協力隊の傍ら、音楽活動をされているとうかがったのですが。

そうなんです。実は4年前からラッパーとして、ライブやフリースタイルバトルに参加したりしています。
元々ヒップホップやラップは好きで、最初は友達に誘われてコピーバンドを組んだのがきっかけだったんですが、思ったよりも楽しくなってきてソロで活動するようになりました。
普段なかなか話す機会もない10代の子なんかと、ラップだと魂の会話ができる感じがして、それが面白いんですよ。
ラップでは基本的に嘘やごまかしができないので、ただ話すよりラップバトルで対話する方がずっとわかり合える感覚があるんです。若い人から教えられるところも多くて、今の僕にとってのライフワークと言っていいと思います。

まだまだ南畑には僕の知らないことだらけですが、僕は南畑のことを「レペゼン那珂川町」だと思ってるんです。これはラップの言葉で「那珂川町を代表する」っていう意味なんですよ。
そんな南畑のもっと深い部分に触れて、いつか南畑を題材にひとつの曲を作りたいですね。地域おこし協力隊の任期があるうちに!

「ふるさと」としての南畑を戻って来られる場所にしたい、という高岸さん。そのために一歩ずつ具体的な取り組みを進める姿のむこうに、若者たちの帰る場所、南畑地区の未来が見えるような気がした。