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INTERVIEW

地域を愛し、明るく素直で元気な子どもに。

インタビューアー / 長尾牧子

[那珂川市立南畑幼稚園教諭] 鳥飼尚枝園長・川﨑徳子主任教諭

那珂川市で40年近く幼稚園勤務のご経験のある、鳥飼園長先生と川﨑先生。実は31年前にも揃って南畑幼稚園で勤務されていた経歴が。

里山の風景にたたずむ、那珂川市立南畑幼稚園。緑に囲まれた園舎で、鳥飼園長先生と川﨑先生が出迎えてくれた。長年子どもたちと向き合ってきたから分かる、南畑幼稚園の日々の保育環境の良さ、これからの幼稚園のことを語っていただいた。

南畑幼稚園の特徴は、どんなところでしょう。

鳥飼園長先生:少人数の幼稚園なので、家庭的で温かい雰囲気が特徴です。私たちが子どもたちに目を配れることはもちろんですが、保護者も地域の方もとても親身に子どもたちに接してくださるんです。

川﨑先生:それから、何と言っても自然がたっぷりですね。草花や虫や木の実を、じかに見て、触って、味わって、それから図鑑で調べる。ここではそれが当たり前です。春には、近くの田んぼでおたまじゃくしを見つけて、みんな夢中になって見ていました。とても贅沢な環境だと思います。

地域の方々との交流も盛んですよね。

川﨑先生:はい。とにかく、地域の方々がなにかにつけて声をかけてくださいます。近くに、いつも温かい挨拶をしてくださる方がいたんですが、あとで聞くと卒園児のお母様だった、ということもありました。ご自分のお子さんが卒園されても、そうやって園の子どもたちのことを見守ってくださるのですね。散歩をしていても、「可愛いね」「どこに行くの?」と皆さん優しく声をかけてくださいます。子どもたちもとても嬉しそうです。

鳥飼園長先生:運動会にはシニアクラブの方も応援に来てくださって、人数の少ない園なのにすごく賑やかです。南畑幼稚園の教育目標は「地域を愛し、明るく素直で元気な幼児の育成」なのですが、このような環境ならではだと思っています。

川﨑先生:幼稚園の教育活動で、裏の畑で野菜を育てています。園児のおじいちゃんが農業をされているので、お家でいろいろと教えてもらったことを、私達に伝えてくれます。子どもたちが自分で種をまき、苗を植えて、水をかけて、収穫して、そして、いただきます。子どもたちは、野菜を育てるのを楽しみにしています。

同じ地域にある南畑小学校との連携も盛んですよね。「南畑幼稚園のカレーパーティー」は伝統ですね。

鳥飼園長先生:はい。南畑小学校へ入学した1年生を、幼稚園へ招待して開くカレーパーティーのことですね。
子どもたちが野菜を育てる活動では、玉ねぎを11月に植えて、ジャガイモを2月に植えています。そうすると、年長児は自分たちで育てた野菜を食べずに卒園していくことになります。元々は、せっかく育てた野菜を卒園した子どもたちにも食べて欲しい、という想いから始まった行事だったのです。

川﨑先生:もちろん、南畑幼稚園の卒園ではない1年生も、全員招待します。この会は、企画や飾り付けも、年長児が自分で考えてするのがポイントなんです。今年も、みんなで看板や座席札を手作りしてお迎えしました。お客様に対して、迎える側は人数が少ないので大忙しですが、心を込めて準備します。

私も参加させていただいたことがありますが、子どもたちと地域の方との交流の機会にもなっていますよね。すごく、あったかい会だなぁと感じました。

川﨑先生:そうですね。また、この後、今度は小学生が来年入学する年長児を南畑小学校の給食に招待してくれるのです。幼稚園はお弁当給食なので、つぎ分け式の給食はすごく新鮮です。それを南畑小学校のお兄さんお姉さんたちが優しく教えてくれます。素敵でしょう?

素敵ですね。入学へのワクワク感が増すでしょうね!このような交流があると小学校へのイメージが膨らんでとてもいいですよね。不安な子もいるかもしれないですから。

川﨑先生:本当に子どもたちは、小学校へ行くのを楽しみにしています。
南畑小学校は近いので、連携はカレーパーティーだけでなく、小学校のプールを利用させてもらったり、観劇会やクリスマスのお話会など、「よかったらいらっしゃい」と小学校側からお声かけいただくことも多いのです。子どもたちは「小学校って楽しいところだな」と感じることができています。

南畑幼稚園で巣立った子どもたち、成長が楽しみですね。南畑っ子、ここが違う!というところはありますか?

川﨑先生:人数は少ないのですが、その分、ひとりひとりが全力を出しきるところですね。たとえば、発表の声がとても大きいこと。運動会や生活発表会で元気よく発表できている子がとても多い気がします。合唱も同様で、ミリカローデンで開催される那珂川市音楽祭では、人数が多い他の園にひけをとらない歌声を聴かせてくれます。

鳥飼園長先生:ひとりひとりの「一生懸命」が育ちます。運動会をはじめ、いろいろな行事でも自分なりのめあてをもってよく頑張ります。そういう子どもたちは目が輝いていますね。

川﨑先生:卒園後もたびたび、幼稚園を訪れてくれるのも嬉しいことですね。中学生や高校生になってから来てくれる子もいます。30数年前に卒園した子が、今度は保護者としてやってきてくれたこともあります。それは、本当に嬉しかったですね。

幼稚園で開かれている「みなみはた広場」は気軽に南畑幼稚園を体験できる機会になっていますね。週に2回、市内のふれあいこども館から出張して来られるそうですね。

川﨑先生:最近は参加者が増えています。市外から来られる方もあります。こども館の先生の楽しいプログラムで親子で一日過ごしながら、この環境を体験してもらえます。
「南畑幼稚園に通いたい」という声も、よく伺います。

鳥飼園長先生:南畑幼稚園へ入園して、南畑小学校へ入学するお子さんがほとんどですが、その中には小規模特認校制度(那珂川市内の校区外から南畑小学校への通学が可能になる制度)を利用して南畑小学校へ通学するというお子さんもいます。

地域に根ざした南畑の子育て環境がもっと知られるようになったらいいですね。SUMITSUKEでも南畑で子育てをしたい、という方からの問い合わせが増えています。これからの南畑と南畑幼稚園がどんな風になっていって欲しいですか?

鳥飼園長先生:ここは、幼少期を過ごすのに最高の環境があります。何十種類もの植物、昆虫を見て、触って、匂いを嗅ぐことができる、採れたての野菜を味わうこともできる、直接体験が多いのです。現在12名の園児ですが、もったいないと思います。もっともっと、たくさんの子どもたちに来てほしいですね。

川﨑先生:そうですね。豊かな成長に必要なものが詰まっています。地域を愛し、明るく素直で元気な子どもたちが、これからもここで育っていくでしょう。それがこの豊かな南畑の自然環境を守っていくことにも繋がっていくと信じています。
運営の仕方が変わっても、南畑に一つだけある幼児教育の場として、これからもずっと子どもたちが自然と触れ合う機会や、小学校や地域の方々とのつながりを保ってほしいと願っています。

南畑の自然と、地域の方や、先生方の溢れる笑顔に囲まれて、子どもたちの日々が作られていきます。五感を育む直接体験と地域の方々との温かい関わりは幼稚園生活の中で、かけがえのない経験となり、子どもたちにますます豊かな心が育っていくでしょう。

※南畑幼稚園は2022年より私立の幼保連携型の認定こども園に移行予定。
※幼保連携型:幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能を併せ持つ単一の施設として、認定こども園としての機能を果たすタイプ。
※認定こども園:教育・保育を一体的に行う施設で、いわば幼稚園と保育所の両方の良さを併せ持っている施設。