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INTERVIEW

時の流れをみつめて

インタビューアー / 長尾 牧子

[かわせみの里 職員] 大矢 初美さん

結婚を機に生まれ育った長崎雲仙から、ご主人と夫婦で南畑へ移住した大矢さん。 子育てを通しての地域活動を経て、現在は中ノ島公園のスタッフとして、南畑を支えるキーパーソンとなっている。

南畑の移住事業が始まったのはここ3年のこと。
そんな動きが始まるずっと前、27年前に移住してきた大矢さん一家は、自分たちのペースで地域に溶け込んで、小学校、中学校のPTA活動にも積極的に参加して来られた。その間、南畑の憩いスポットである中ノ島公園のスタッフとして勤務され、南畑の人気スポットから地域を見つめ続けてはや14年目となる。そんな大矢さんに、中ノ島公園の満開の桜を見ながらお話をうかがった。

大矢さんはご結婚を機に南畑にいらっしゃったんですね。

大矢:そうなんです。新居探しは最初から「中山間の方にしよう」とはふんわり考えていました。私の出身は長崎の雲仙で。そうそう、私も山育ちなんですよ(笑)だから、このあたりの雰囲気はとてもしっくり来ましたね。
神奈川で働いていたこともあるんですけど、街の方はどうにも息苦しくて。街は楽しいけど、私にとってはやっぱり遊びに行く場所ですね。
でも、最初から南畑で家を探していたわけじゃなかったんです。夫が大野城で働いていて職場に近い場所で探していて、それでたまたま南畑の市ノ瀬に家が見つかって。だから、ここに来たのは本当に偶然の縁という感じですね。

南畑に住んでみてどうでしたか?

大矢:こういう地域だとなかなか溶け込みづらかったりもしますけど、南畑はそんなことぜんぜんなかったですね。ご近所さんは自分たちの親よりも年上の方たちばっかりだったんですけど、若かった私たち夫婦にとてもよくしてくださって、すぐに地域の一員にしてもらえました。
3人の子どもは、南畑幼稚園、南畑小学校、と南畑で育った、純“畑っ子”ですね!

昔は移住者だった大矢さんですが、お子さん達の学校ではPTA活動などにも熱心に参加されたと聞いています。南畑のママ達も、「大矢さんね!」と皆さんご存知です。何でもお引き受けくださって、人望も厚いですね。

大矢:南畑は人数少ないのもあるけど、みんな地域のためになることに積極的なんですよ。「じゃあ、やろっか」と笑顔で引き受ける人、ほんとに多いです。だから、ここで暮らすうちに私も気づけばそんな風になっていましたね。南畑幼稚園、南畑小学校、那珂川南中学校それぞれで、気づいたら色々なお役をやっていましたね(笑)

中ノ島公園でもメインスタッフとして長くお仕事されていますよね。大矢さんのお仕事のことを聞かせていただけますか?

大矢:私は主に、かわせみの里(中ノ島公園内の直売所)に関わる事務をやっています。かわせみの里の店頭に立ったり、生産者さんと出荷のやり取りをしたり、中ノ島公園でのイベントを企画したり……なんでもやってる感じですね。

かわせみの里は、最近店舗ロゴや店内デザインをリニューアルされていますよね。店内がとても明るくなったと感じます。

大矢:ロゴデザインは地域の方にお願いして作ってもらったんですよ。店内は野菜を入れて展示する木箱やポップなどに気を配って雰囲気が変わったと思います。「地域に根ざした、地域を元気にしていく施設」として、南畑や那珂川、近隣地域の農産物や物品を販売することはもちろんですが、地域の方との交流も大切にしています。

かわせみの里にはいつも新鮮なお野菜が沢山並んでいますよね。こういう直販所に来ると主婦としてはワクワクします!

大矢:1年を通してたくさんのお客様に来ていただいていますが、比較すると夏場の来場者がとても多いです。街から近い水遊びのスポットとして、福岡市内や近郊からたくさんのご家族がいらっしゃるんです。7月8月駐車場はいつもいっぱいです。春や秋、冬にも季節ごとのイベントを開いたりもします。先日は桜祭りを開いたんですよ。餅つきイベントもよくしますね。

ここ数年、南畑ぼうぶら会議(南畑地域活性化協議会)の立ち上げや南畑地区移住促進事業の始まりなど、南畑にとっては変化の大きい時期だったと思いますが、大矢さんから見られての変化はいかがですか?

大矢:佐賀へ抜ける道があるので、単純な交通量は増えたような気がします。パン屋さんやカフェなども増えてきましたね。
でも、地元住民としては、昔のように子どもたちが遊んでいないのが寂しいな、と感じますね。
南畑小学校は、とてもいい学校なのに残念です。うちの子どもたちが通っていた頃でも全校生徒130人くらいで、大型小学校ではないので、1年〜6年までみんな仲が良かった。地域のおじいちゃんおばあちゃんとも仲良くて、餅つき大会や運動会での交流が盛んでした。そんな伝統は今でも変わらず続いているんです。
中ノ島公園にずっといると、そんな地域の方との変わらない交流も感じられるけれど、子どもが減ってることにも気付くんですよね。

これからの南畑がどんな風になっていって欲しいですか?

大矢:やっぱり南畑小学校がずっと続いて欲しいです。そのためにまずは、地元の各家庭に一人、巣立っていった子どもたちが戻ってくることができれば、ちょうどいい具合に増えていくのではないでしょうか。
それからもちろん、南畑へ移住されるご家族も増えていくといいですよね。
そして、かわせみの里が南畑の新鮮なお野菜を購入できたり、地域の方と交流できる店として、もっともっと賑わっていくと嬉しいです。

巣立っていった大矢家のお子さんたちも、帰ってきては山の空気を吸って、リフレッシュして帰るそう。街の暮らしに息が詰まったら、帰れる山里があるから安心できる。毎年毎年眺めてきた桜を、愛おしそうに眺める大矢さんは、そんなみんなが帰ってきたくなる南畑をこれからも守っていく人でした。