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INTERVIEW

南畑の魅力は細道にあり

インタビューアー / 福岡R不動産

[総合型地域スポーツクラブ なかがわAC 広報担当] 西岡俊輔さん

那珂川市在住22年。でも実は、自転車で走る南畑の魅力に目覚めたのは2年前。今では南畑をホームコースとして週に1度は通うサイクリスト。福岡市内で働く傍ら、スポーツで那珂川市を盛り上げようと、次々に企画を描くアイデアマンでもある。

南畑地区を車で走っていると、だんだん気になってくる存在がある。スポーツバイクだ。南畑では、県境の峠へと続く道や中ノ島公園のベンチで、スタイリッシュな自転車を携えた人たちを目にする機会が多い。そんなサイクリストのひとりである西岡さんは、総合型地域スポーツクラブなかがわACの広報担当として、南畑でのスポーツの可能性を模索している。中ノ島公園での待ち合わせには、本格的なサイクリングスタイルで登場してくれた。

本気のサイクリングスタイルですね!

はい。今日は南畑のとっておきの細道をご案内しようと思って。
よくスポーツバイクを見かけるのは、国道から五ヶ山へ向かうルートですよね。あれはまさに王道の峠コース、トレーニングにはぴったりですから。でも実は、知らなかった景色に癒やされたり感動したり、そんな「楽しむ」ための可能性がたっぷり詰まったコースは、なかなか気付きづらい細道の方だと思ってるんですよ。国道の両脇に迫っている山に向かって、一本横道に入るとびっくりするような風景に出会えるんです。
百聞は一見にしかず、ですから、ぜひ今から行ってみましょう!

細道の魅力、というと一体どんなものなんでしょう。

そうですね。たとえば、滝や川がありますね。南畑の山には那珂川に注ぐ支流がたくさんあるので、少し脇道に入るとすぐ、小さな川や滝が姿を表すんです。まさに水の里ですね。それから、竹林や杉林が現れるのも。国道から一本入っただけなのに、まるで避暑地のサイクリングみたいで。
ああ、それからですね――そうそう。こんな風に森が途切れて棚田が広がる風景。これがこのコースのとっておきなんですよ。

うわあ、棚田!向こうに見えるのは国道ですね。いつもあっちは車で通っていますよ。 棚田が見えるなあ、とは思っていたんですが、まさかここから抜けられるとは。

やっぱり南畑は中山間地ですから、どうしても国道沿いに移動することが多くなってしまうんですけど、実はこの市ノ瀬の棚田はこちらから見るほうがよりキレイなんですよ。田んぼに水が張った田植え前は、空が一面に写って。もちろん、秋の稲刈り前の景色も見事です。

こんな風景に出会われるまではずいぶん通われたんじゃないですか?南畑に来られるきっかけはなんだったんでしょう。

それが実は、南畑に来始めたのは2年くらい前からなんですよ。那珂川在住歴は20年以上なんですけど、それまではそれこそ家族で中ノ島公園に遊びに来るくらいで、自転車で来るなんて想像もしなかったし、こんな脇道があることも知らなかったんです。
健康を気にして自転車に乗り始めた頃、大阪に転勤になったのがきっかけですね。転勤先で入ったサイクリングクラブのライドイベントで、横道の魅力に目覚めたんです。こういう横道を行くのって、ちょっと最初はドキドキするようなところもあるんですけど、必ずその先にいい景色や癒やされる場所があるんですよ。
それで、転勤から戻ってみたら、南畑には実はたくさんそんなスポットがあることに気付いたんです。

そんな場所でどんなことを企画されているんですか?

構想は色々あるんですが……いちばん分かりやすいものだと、今年の11月の南畑美術散歩のためにサイクリングコースを組んでいますよ。これまでは、工房を巡るには自家用車かシャトルバスしかなかったんですが、今年は博多南駅前の自転車屋さんとコラボして、レンタサイクルを提供することにしたんです。コースは2つ、比較的傾斜の少ない「親子チャレンジコース」と、経験者向けの「サイクリストコース」を用意しています。「親子チャレンジコース」の方、今から行ってみましょう!

南畑美術散歩:毎年11月に開催される南畑地区のアートイベント。陶芸や染色をはじめとした多くの工房がこの日だけは開放され、体験教室なども開かれる。

いつもは車で登ってしまう坂ですが、自転車で登ると時間がかかる分、景色がよく見える気がします。

ゆったりしたペースで周りの風景を楽しみながら、季節を肌で感じられるのが自転車のいいところなんですよね。この時期だと、柿が赤く色づいていたり、コスモスがたくさん咲いている場所があったり。風の温度もある日すっと変わって、ああまた季節が移り変わったんだな、と。
このコースは6箇所の工房を回りながら、パン屋さんやカフェにも立ち寄れるコースになっているんですよ。4km程度で親子連れでも楽しめるゆるめのコースなので、普段あまり自転車に乗らない人にこそ体験してほしいですね。
もちろん、サイクリング経験に自信のある方にはフルコースをおすすめしたいです。12kmで12箇所の工房を回れるコースで、登り甲斐のある坂もしっかり組み込んでありますから。

※南畑美術散歩サイクルコースの詳細はこちら

私たちも物件をさがしてずいぶん南畑を回ったつもりでいましたが、知らなかった場所がたくさんありました。

次々に知らなかった場所を発見できるのが、細道を行く魅力なんですよね。そんな細道がたくさんある南畑は、自然や風景を楽しむサイクリングのフィールドとしてすごく可能性があると思うんです。
今、福岡県全体でもサイクルツーリズムを盛り上げようという動きがあるんですよ。なかがわACでもコースの試走などのお手伝いをしています。那珂川は、糸島、朝倉、芦屋などとならんで可能性があると思います。ただ滞在する場所がないのがネックなので、山を越えた佐賀の温泉とコラボして泊まれるコースにできないかな、なんてことも、今、実は那珂川市さんにご提案しているところなんですよ。

南畑がサイクリングの拠点になるかもしれないんですね。

ホスピタリティあふれる南畑の方々と一緒なら、きっと素敵な場所が作れると思うんですよ。
たとえばこの木組みの枠みたいなものは、バイクラックといって、スタンドのないスポーツバイクを安心して駐輪するために必要な器具なんですが、これは中ノ島公園の内山さんが手作りしてくださったものなんです。バイクラックがあるということは「サイクリスト歓迎!」というメッセージになるんですよ。だからこれが置いてある場所を見かけるとすごく嬉しくなりますし、そういうのはサイクリスト仲間の中でも口コミで一気に広がりますね。
他にも、最初にご案内した棚田にはもちろんオーナーがいらっしゃるので、通りかかられたときにご挨拶して通ってもいいかうかがったんですが、二つ返事で快諾していただけて、そういう人のあったかさみたいなものを感じる機会が多いです。そうやって気軽に人と触れ合えるのも、サイクリングの魅力ですね。

南畑の未来について、どんな風になってほしいと思われますか?

これはまだ空想の段階なんですが、南畑にスポーツを楽しむ人のための拠点があったらいいなあと思っています。サイクリングに限らず、トレイルランや登山なんかについても、ここは言ってみればエントランス的な位置づけになれるんじゃないかなと。
個人的には、南畑の不思議にモダンな建物も好きなんですよ。古いなかにもしゃれたデザインのものが多くて、自転車に乗っているとついつい眺めてしまいます。SUMTISUKE那珂川の空き家バンクにも時々そんな物件が出ていますよね。そんな物件で、スポーツを楽しむ人がシャワーを浴びたり休憩したり、情報交換したりできるような場所があったらすごくいいと思うんですよ。

 

スポーツをきっかけにした移住、なんていうのも?

ああ、それは可能性あると思いますよ!特にクライマー(山道を得意とするサイクリスト)は是非、南畑に移住するべきです。五ヶ山コースはトレーニングのための王道ルートなんです。早起きして、朝1時間位で五ヶ山ルートを攻めて、それから7:30のバスに乗れば、実は8:07の新幹線で福岡市内まで通勤できちゃうんですよ。最高じゃないですか?南畑クライマー移住計画、いけますよ!(笑)

南畑の魅力は、細道を行ける自転車でこそ楽しめる、と教えてくれた西岡さん。たくさんの構想に耳を傾けていると、サイクリングのみならず、スポーツを楽しむ人でにぎわう南畑のイメージが浮かんでくるような気がした。