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INTERVIEW

地域を守る力に

インタビューアー / 長尾牧子

[消防団員] 上野 康之さん/藤野 敬一さん

南畑生まれ南畑育ちのおふたり。那珂川市消防団第一分団に所属し、日々のお仕事のかたわら、火災や自然災害から地域の人々を守る活動に従事されている。

那珂川市に4つある消防団の中の、第一分団が南畑の消防団。そこに所属する上野さんと藤野さんお二人は、共に南畑で生まれ育った南畑っ子だ。上野さんは22年、藤野さんは10年、仕事のかたわら消防団として活動している。
2019年1月13日、上野さんと藤野さんが、粋な法被に身を包んで現れた。この日はなんと筑紫地区合同出初式。幸運にも一年に一度しか着用しないという晴れ姿のお二人に会うことができた。

今日はお疲れのところお時間いただいてありがとうございます。それにしても、法被姿がかっこいいですね!消防団の晴れ着ですね。

上野さん:そうでしょう。特に、今日の法被は新調ですから。何と言っても「那珂川市」になりましたからね。法被の下も、シャツにネクタイを着用する決まりになって、キリッとした感じになったんですよ。

お二人ともお仕事のかたわら消防団に所属されて、大変ではないかと思います。上野さんと藤野さんのお仕事について聞かせてください。

上野さん:私は南畑の埋金地区で農業をやっています。若い頃はグリーンピア那珂川に勤めていた時期もありましたが、30歳を過ぎた頃、親父がやっていた農業を手伝うことになりました。それまでは農家を継ぐなんて予想もしていなかったんですけどねえ。今では野菜全般栽培してます!

藤野さん:僕は福岡市内の会社に通勤してます。一度南畑を出て一人暮らしをしたこともありましたが、やっぱり南畑の方が好きで、帰ってきたんです。

そうですよね。お二人とも南畑で生まれて南畑で育っていますね。ここの空気感とか広々したお家とかが当たり前ですから、街中は逆に息苦しいでしょうね。

藤野さん:そうなんです。ワンルームのアパートもいまひとつ居心地がよくなくて。それにひとりでいると、なんだか暇になっちゃうんですよ。南畑みたいな地域では草刈りなんかの行事が大変だっていいますけど、それが生活のリズムになってたんですね。修行みたいな(笑)。

上野さん:そうそう。逆に行事や集まりがないと物足りんよね。

生活の基本が違いますね!お二人が消防団に入ったきっかけと、消防団の活動内容を教えていただけますか?

上野さん:私は21歳の時、消防団に入りました。私の時代は、地域に住む20代〜30代は当然入る感じでしたね。だから、周りは知っている人ばかり。今は40代の団員もいます。地域に若い人が少ないですからね。

藤野さん:僕は、20代のはじめ頃は「まだいいかな」と断っていたのですが、26歳の時にやっと入団しました。
でも、もっと早く入っておけばよかったと思うくらい楽しいんです。年が近い同士でもなかなか気軽に声をかけ合う機会は少ないんですが、そのコミュニケーションのハードルがまず下がりましたね。それから、年代の違う長老たちからも消防団に入っているというだけで声をかけられる。南畑に住むのが楽しくなりました。

上野さん:活動内容は、基本的に2ヶ月に1回、消防訓練があります。もちろん、災害が起きて避難勧告などが出ると、各担当地区に待機して救助の要請を待ちます。最近は、火事よりも大雨なんかの災害や、山で遭難された方の捜索が多いですね。

藤野さん:訓練は色々と覚えることがあり大変なところもありますが、車両器具の知識や、集団行動のやり方が身について、いざというとき役に立つところがいいですね。

同年代だけではなくて、交流の幅がすごく広がりそうですよね。

上野さん:そうそう。いろんな職種の人がいて楽しいですよ。消防団に入らなかったらできなかったような繋がりができるんです。以前は、その繋がりで田んぼを貸してくれる人が現れたり、そんなこともありました。

藤野さん:知り合いは本当に増えますよね。南畑に住んでいても、たとえば南面里なら南面里だけの付き合いになってしまうことが多いんです。地域行事は行政区単位ですからね。でも、消防団では那珂川市内の他の分団との交流もあるので、普段は話さない人たちと話せるのが楽しいです。それに、地域の長老みたいな方にとっても、消防団に入っているというだけでもう「知らない人」ではなくなるんですよ。そうして、信頼してもらえるのも嬉しいですね。

上野さん:僕は長年活動しているので、去年は分団長までさせてもらったのですが、そうすると、筑紫地区ということで春日、大野城の分団とも交流ができるんですね。とにかく人脈はすごく広がったと感じます。

藤野さん:もちろん、練習など大変なこともあるんですけど、普通に暮らしていたらなかなかできない、地域との強いつながりができるので、本当は新しく引っ越してこられた方にこそ入ってみてほしいなと思いますね。

とても頼もしいですよね。地域にこういう若者がいらっしゃるって。そんなおふたりから見て、これからの南畑は、どうなっていってほしいですか?

上野さん:うちは子供が3人いますが、小学校でも子どもの数が減っているのはすごく感じます。僕たちの時代に比べるとね。やっぱりもう少し子どもが増えて欲しいですね。こうやってパパ達がしっかり地域を守ってますからね!

藤野さん:車の通行量は増えたんですけどね。佐賀への抜け道に良いみたいで。だけど、南畑そのものはあまり変わっていなくて。僕の住んでいる南面里地区は老人1人世帯がとても多くなってきました。世代が変わった時とかどうなるんだろう?と不安になります。やっぱり「元気」な南畑であってほしいと思いますね。今いる人達でもっと盛り上げていけたらなあ。

取材中、通りかかった軽トラ運転席のUさんが、「おう!よか男やね!」と笑って声をかけていきました。「あの人も消防団だったんですよ」と藤野さん。
消防団という地域活動を通して、世代を越えて人と人との繋がりが脈々と育まれる、南畑らしいコミュニティの温もりを感じました。